京都地方裁判所 平成6年(ワ)3367号 判決 1997年1月30日
京都市下京区万寿寺通東洞院東入万寿寺中之町七二番地
原告
中井均
右訴訟代理人弁護士
柴田茲行
京都市中京区室町通三条上ル役行者町三七七番地
(登記簿上の本店所在地)京都市下京区東洞院七条下ル
塩小路町五二二番地聖光堂ビル四〇一号
被告
株式会社ユー
右代表者代表取締役
土屋義弘
右訴訟代理人弁護士
谷口忠武
同
下谷靖子
同
豊田幸宏
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、別紙一記載の意匠に係る物品を製造、譲渡若しくは貸渡し、又は譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。
2 被告は、右物品及びその半製品を廃棄せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 主文同旨
2 仮執行免脱宣言
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その意匠を「本件意匠」という)を有する。
登録意匠番号 第九〇〇七九八号
意匠に係る物品 股関節部緊締用バンド
出願日 平成三年八月二〇日
登録日 平成六年三月二五日
登録意匠の内容 別紙二(甲三-意匠公報の写し)記載のとおり
2 被告は、別紙一記載の意匠(以下「イ号意匠」という)に係る物品を製造、販売している。
3 本件意匠に係る物品は、長手方向に豊かな弾性を有する上方バンドと下方バンドとがそれぞれその左右両端部で一体化され、その両端部を両手で引っ張りつつ相互に係着させることによって、その上方バンドでヒトの仙腸関節のある位置の腰周りを緊縛することを兼ねつつその下方バンドでヒトの股関節のある位置の腰周りを上下にずれることのない安定した状態で緊締できるようにした股関節部緊締用バンドである。
これに対し、イ号意匠に係る物品は、長手方向に豊かな弾性を有する上方バンドと下方バンドとがそれぞれその左右両端部で一体化され、その両端部を両手で引っ張りながら相互に係着させることによって、その上方バンドでヒトの仙腸関節のある位置の腰周りを緊縛することを兼ねつつその下方バンドでヒトの股関節のある位置の腰周りを上下にずれることのない安定した状態で緊締できるようにしたバンドであって、本件意匠に係る物品と同一又は類似の物品である。
4 両意匠の構成の対比
(一) 本件意匠の構成は、次のとおりである。
(1) 左右長が全左右長の約二分の一で上下巾が全左右長の約八分の一である中間部と、その中間部から左右へそれぞれ、下縁線をして斜め上方へ上昇させるようにして、上下巾を縮めながら上下巾がその中間部上下巾の約半分の左右両端部へと連続する部分とから成る扁平船形の横長帯状物である上方バンドと、
(2) 左右長及び上下巾が前記上方バンドの中間部とほぼ同じ長さ及び上下巾の中間部と、その中間部から左右へそれぞれ上下巾を縮めながら、上下巾がその中間部上下巾の約半分でありかつ上縁線がその中間部上縁線よりもほぼその中間部の上下巾分近く(これは前記上方バンドの中間部の上下巾分近くでもある)上方に位置するようになっている左右両端部へと連続する部分とから成る、正面で左右両端部が斜め上方へ緩く彎曲する形の扁平船形で、かつ全左右長がその上方バンドのそれとほぼ同じである横長帯状物の下方バンドとから成り、
(3) 下方バンドの左右両端部の後側に上方バンドの左右両端部を重ねつつ、かつ下方バンドの中間部上方部を上下方向に対して約三〇度後方へ傾斜させる一方で上方バンドの中間部下方部を上下方向に対して同様に約三〇度後方へ傾斜させながら上方バンドの中間部下縁部をして下方バンドの中間部上縁部を覆わせる態様にしつつ、下方バンドと上方バンドの双方の左右両端部を相互に一体化し、さらにその一体化した左右両端部の各先端をコの字状若しくはその左右対称形に成形したものである。
(二) イ号意匠の構成は、次のとおりである。
(1) 中間部の上下巾が全左右長の約八分の一で、左右両端部の上下巾が全左右長の約一二分の一(中間部上下巾の約三分の二)である扁平楕円形の横長帯状物である上方バンドと、
(2) 中間部及び左右両端部の各上下巾が上方バンドのそれらとほぼ同じで、かつ全左右長も上方バンドのそれとほぼ同じである扁平楕円形の横長帯状物の下方バンドとから成り、
(3) 下方バンドの左右両端部の後側に上方バンドの左右両端部を重ねつつ、かつ下方バンドの中間部上方部を下方へ水平方向近くまで弛ませる形に後方へ傾斜させつつ、その中間部の上縁線が上方バンドの中間部の上下巾分近く下降して上方バンドの中間部の下縁線に接近するようにする一方で、上方バンドの中間部下方部を上下方向に対して約三〇度傾斜させながら上方バンドの中間部下縁部をして下方バンドの中間部上縁部を覆わせる態様にしつつ、下方バンドと上方バンドの双方の左右両端部を相互に一体化し、さらにその一体化した左右両端部の各先端を円弧状に成形している。
(4) そして、上方バンドの正面左右方向の真中部のヒトの仙腸関節部と当接すべき箇所には、その箇所での上方バンドのほぼ上下巾に等しい縦方向の長さを有する縦長矩形片に被覆された縦長の小判形板体が付設され、また上方バンドの下縁部及び下方バンドの上縁部の間にはそれらの各正面中央寄りの左右二箇所にそれら各バンド間の上下間隔が拡がり過ぎるのを防止するための小さな四角布片が付設され、さらに、バンドの左側部の正面には縦一列状の二箇所にバンド係着用ホックの雄金具が付設され、かつバンドの右側端部の背面には縦三列、横二列状の六箇所にそのホックの雌金具が付設されているとともに、上方バンドの左右各端部下端の背面に一箇所ずつ及び下方バンドの中間部下縁の中央寄りの左右一箇所ずつに股通しテープ紐を付加するときの用意としてのスナックホックの雌金具がそれぞれ付設されているものである。
(三) 両意匠の対比
本件意匠とイ号意匠を対比すると、
(1) 上下巾が全左右長の約八分の一である中間部とその左右両側からそれよりも上下巾が狭い左右両端部へと連続する部分から成る相互にほぼ同一左右長の横長帯状物でそれぞれ構成されている上方バンドと下方バンドとが、下方バンドの左右両端部の後側に上方バンドの左右両端部を重ねつつ、かつ下方バンドの中間部上方部を後方へ傾斜させるとともに、その下方バンドの中間部上縁線を上方バンドの中間部下縁線に接近させるようにしつつ、さらに上方バンドの中間部下方部を後方へ傾斜させながらその上方バンドの中間部下縁部をして下方バンドの中間部上縁部を覆わせる態様にしつつ、下方バンドと上方バンドの双方の左右両端部で相互に一体化された全体形状のバンドである点において、両意匠は共通する。
(2) そして、この共通点に係る態様は、ヒトの股関節部周りを緊締するバンドとしての基本的構成態様であって、この種のバンドの意匠として全体的なまとまりを形成するとともに、従来のヒトの腰部とか胴部の周りを緊締するバンド類においては見受けることのなかった斬新、新規な態様であり、したがってこの基本的構成態様は顕著に看者の注意を惹く意匠の部分になっていて、ヒトの股関節部を緊締するバンドに係る本件意匠の要部というべき部分である。
5 以上のとおり、イ号意匠は、本件意匠とその要部を共通にし、両意匠の間に存する差異は微細なもので、別異の美的印象をもたらすものではない。したがって、イ号意匠は、本件意匠に類似するものであって、イ号意匠に係る物品を製造、販売する被告の行為は本件意匠を侵害するものである。
6 よって、原告は、被告に対し、本件意匠権に基づき、イ号意匠に係る物品の製造等の差止及び右物品等の廃棄を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実は否認する。別紙一の図面は、被告が「ユーコシラック」の商品名で製造販売している商品について本件意匠に類似させて作図されたものと思われるが、これは「ユーコシラック」の意匠そのものではない。ユーコシラックの意匠は、別紙三(乙一の2-意匠登録願-の図面代用写真)のとおりである。
3 同3及び4の事実は不知。同5の事実は争う。
三 被告の主張
1 両意匠の対比
(一) ユーコシラックの意匠
ユーコシラックの意匠は、次に分説する色彩、模様及び形状の結合した股関節部緊締用バンドである。
(1) 色彩
やわらかい美感を伴った肌色である。
(2) 模様
バンドの表面地全体に直径約四ミリメートルのドツトが約一センチメートル間隔で均等に配され、かつ、約一八センチメートル間隔で、「YOU KOSHI LUCK」という文字がいずれも模様として記されている。
(3) 形状
形状は、別紙三のとおりである。
(二) 本件意匠とユーコシラックの意匠との相違点
(1) 色彩について
ユーコシラックはやわらかい美感を伴った肌色であるのに対し、本件意匠は、白色(無彩色)である。
(2) 模様について
ユーコシラックは、前記(一)(2)のとおりの有模様であるのに対し、本件意匠は無模様である。
(3) 形状について
(イ) バンドの構成
ユーコシラックは、両端部が固着し、中央部が二本に別れる構造を持つ一本のバンドであるのに対し、本件意匠は両端部が自在に相互に係着させたりその係着を外したりすることができる二本のバンドである。
(ロ) バンドの両端部の形状
ユーコシラックの正面右端部は、<省略>形であり、左右巾と上下巾はほぼ同じ長さである。正面左端は<省略>形で左右巾と上下巾はほぼ同じ長さであり、その表面にはフックの受金具が六個右図のとおり並んでいる。背面右端は正面右端と同形であり、背面左端は<省略>形で、正面左端と同形であるが表面には右図のとおり二個のフックがつけられている。
これに対し、本件意匠の両端部は、正面、左右とも左右一上下二の割合の長方形である。
(ハ) バンド両端部の上下巾と中央部の巾の比率
ユーコシラックの比率は約一対一・三であるのに対し、本件意匠は、約一対二・三である。
(ニ) 中央部における上下バンドの固定状況
ユーコシラックの中央部の二本のバンドは、背面部中央において二箇所四角形の共布で固着されている。これに対し、本件意匠においては、二本のバンドはそれぞれ別個独立で固着されていない。
(ホ) 下方バンド中央部のタック
ユーコシラックの下方バンド中央下部には約四センチメートルの深さでタックが一つ入っている。そのため同付近は軽いふくらみをもった形状となっている。これに対して本件意匠は、こうしたタックは一切なく形状も単純な平面である。
(ヘ) 背面部中央付近の付属品の付着
ユーコシラックの上方バンドの中央部には、仙骨サポートの機能を持たせる楕円形の発泡プラスチック片を入れるポケットがつけられ意匠の一部をなしている。また、下方バンドの中央下部には長さ約一八センチメートルの細長いゴム状布二本がついている。これに対し、本件意匠には、こうしたものが一切ない。
(ト) 意匠公報の図面について
本件意匠の図面として、意匠公報には、正面図、背面図、平面図、底面図、右側面図、A-A線断面図、両端部を係着させた状態の正面図、両端部を係着させた状態の平面図の八図(別紙二)が記載されているが、ユーユシラックのバンドの係着状態が異なるため対応する作図をすることは不可能である。強いて比較するなら別紙三の図面代用写真との比較になるが、両者は全く異なった形状である。
(チ) 形状の全体印象について
ユーコシラックの意匠は、全体的にやわらかな曲線をイメージして作られている。これに対し、本件意匠に係る物品は、全体印象としては直線部分が多く、イメージを異にする。
(三) 本件意匠とユーコシラックの意匠の類比
本件意匠に係る物品もユーコシラックもいずれも健康用具であり、共通するところは、両端で係着された二本のバンドでヒトの股関節のある位置の腰部周りを上下に移動しない安定した状態で緊締する股関節部緊締用バンドであることである。こうした機能上の性質から両者の形状に似通う部分も出るが、これは機能上の問題であり意匠権の問題ではない。こうした物品につき美感を伴う意匠上の処理をしてはじめてその美感を伴う部分が意匠権の対象部分となるのであり、両意匠の類似の有無もこの点により判断すべきである。
ユーコシラックが、機能上の構造以外に美感を伴うように工夫した部分は、主として色彩、模様、全体を曲線イメージで統一したこと、バンド巾のバランス及びフックの形状であり、他はもっぱら機能上の追求をしたものである。右いずれの点においても本件意匠と共通しない。
両意匠の類似判断は、一般の需要者を基準にして混同するおそれがあるか否かにより判断すべきであるところ、本件意匠に係る物品は、独立した二本のバンドであり、単独でも、二本係留してでも使用できるものである。二本が分離されているとき、これとユーコシラックの意匠が類似すると判断する一般需要者が皆無であることは明らかである。本件意匠に係る二本のバンドが相互に係着されているときに、はじめて形状に共通の部分が発生するが、意匠上の特徴については前記のとおり両者は大きく異なるものであり、一般の需要者において混同するおそれは皆無である。
2 先使用の抗弁
(一) 被告代表者土屋善弘と、訴外堀江久男は、平成二年四月ころからユーコシラックの考案にとりかかり、平成三年三月ころ、原型を考案し試作に入った。その後、装着後に血行障害を起こさないためのベルトの弾性についての研究改良を繰り返した。
(二) 平成三年五月ころ、ユーコシラックの完成品の考案を了し、工業製品としての製造に取りかかった。被告は、同年七月三日、ユーコシラックのカタログの製造に取りかかり、同月一五日、被告の有力販売代理店であった下鳥にサンプルを渡し、協力を求めた。
(三) 平成三年七月二二日、出願人を有限会社堀江企画(以下「堀江企画」という)、考案者を堀江久男として、ユーコシラックにつき実用新案を出願した。同日、被告の代表的販売代理店の研修会においてユーコシラックを発表しその販売を開始した。
(四) よって、仮に本件意匠とユーコシラックの意匠が抵触関係にあるとしても、被告は先使用していたものである。
3 実用新案権の通常実施権に基づく製造販売
(一) 出願人訴外堀江企画は、公開実用新案公報に係る実用新案登録願第六五〇八九号(乙一〇)につき、平成七年七月二六日付けで出願公告の決定を得た。
(二) 被告のユーコシラックの製造販売は、右堀江企画の実用新案につき同社との通常実施権許諾契約に基づいて行ったものである。
(三) 右堀江企画の実用新案権は、平成三年七月二二日に出願したものであるのに対し、原告の保有する本件意匠は、平成三年八月二〇日の出願に係るものである。
(四) 被告の製造販売に係るユーコシラックは、実用新案公報(別紙四-乙一一)に記載されている図4に該当する。したがって、もし、ユーコシラックの意匠が原告の本件意匠と抵触するのなら、原告の本件意匠と訴外堀江企画の保有する右実用新案権とは抵触関係にあることとなる。
(五) 意匠法二六条は、意匠権と抵触する実用新案権との関係につき、出願日の前後によって、その効力を決するものと定め、意匠権がその意匠登録出願日前の出願に係る他人の実用新案権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない旨定めている。
(六) 本件は、まさに右の関係にあたるから、原告は被告に対し、意匠権侵害を主張することはできない。
四 原告の反論
1 両意匠の類比について
(一) 本件意匠は、形状と模様の結合意匠であって色彩は構成要素にはなっていない。また、「YOU KOSHI LUCK」の文字は、商品の出所を表示する商標的なものであるから看者にとって意匠の構成要素としては認識し難いものであるし、文字自体も看者に評価すべき新規性も創作性も認識させるものではない。さらに、ユーコシラックの地模様は周知の水玉模様と称されるものの一種であってありふれた模様である。したがって、これらは意匠の類否を左右するほどの意匠の要素とはなり得ない。
(二) 本件意匠のバンドは、被告の主張するような二本に分離できる構成にはなっていない。本件意匠公報の「両端部は自在に、相互に係着させたりその係着を外したりすることができる」との記載は、意匠公報などの図面に「正面図」、「平面図」などで示される基本姿態と「両端部を係着させた状態の正面図」などで示される両端部を相互に係着させた姿態との間にわたって意匠が変化しうることを示すための記載にすぎない。
(三) その他被告の主張するバンド両端部の形状、中央部におけるバンドの固定状況、下方バンド中央部のタックの有無、背面部中央付近の付属品の有無等は、バンド全体から観察すれば、いずれも微差に属する意匠の部分的変化にすぎず、両意匠に共通する本件意匠の要部を認識した上での総合判断によれば、両意匠は相互に類似すると判断すべきである。
2 先使用の主張について
被告の先使用の事実は否認する。また、以下の理由により、被告は、先使用の抗弁を主張できない。
(一) 原告は、昭和五三年ころから本件意匠の原案になるペアバンド及びバンド付きパンツ等各種健康目的のための商品の特許、実用新案、意匠、商標登録などを取得するための基礎研究を始めていた。原告の右研究による特許等の申請は約七〇件に及びそのうち約半数は認可されている。そのうち、本件意匠の基礎となる一本バンドは昭和五九年一一月九日意匠登録を出願し、平成四年一月一七日意匠登録されている。また、同じく本件意匠の基礎となる二本バンド付きパンツは平成元年五月一二日「腰部緊締バンド付きボデイスーツ」として申請し、平成四年八月二八日に意匠登録されている。
本件意匠に係る二重バンドは右原告製品である二本バンド付きパンツの問題点を改良し、二本バンド部分をパンツから切り離してバンド部分のみを商品化したものである。この製品の商品化計画は、平成二年春ころには原告によって既になされていた。
(二) 原告は、自己の経営する訴外株式会社ナカイ(以下「ナカイ」という)においてこれらの商品化と製造を行ってきており、被告は、昭和六一年一〇月二三日から平成三年八月三一日まで、ナカイとの間で原告開発創作に係る各種商品の販売代理店契約を締結し、その販売を行っていたものであり、本件意匠を含む前述のとおりの原告の有する全ての意匠権等を熟知する地位にいた。そして、右販売代理店契約上、被告には類似商品の製造販売等禁止義務がある
しかるところ、平成三年四、五月ころ、原告は、被告が右義務に反し、原告商品の模造製品を試作中であるとの情報を得、被告試作品が本件意匠類似のバンド部分のみの製品であることも考えられたので、原告は同年七月には右製品を商品化、製造販売に着手し、同年八月二〇日、本件意匠登録申請に及んだものである。
(三) 被告は、ナカイとの販売代理店契約締結中に、類似商品の製造販売等禁止義務に反し、契約上の地位を不正に利用し、ほしいままに原告の本件意匠の原理を盗用し、模倣し製造した商品を同契約に基づく販売ルートをそのまま利用して販売しているものである。
このように、本件意匠の基たる原理の発明創作は、すべて原告によってなされたものであり、被告会社はその原理をあたかも自ら考案した原理のように偽って原告の本件意匠を盗用したものであり、被告のユーコシラックは、その創作の経路が意匠権者たる原告の創作から出たことは明らかである。
(四) 右のような被告の一連の背信行為に基づく本件意匠権侵害商品であるユーコシラックの製造販売行為は、善意の実施者を保護するため公平の見地から設けられた制度であるいわゆる先使用権(意匠法二九条)の適用外の行為である。
3 実用新案の通常実施権に基づく製造販売の主張について
意匠法上の意匠と実用新案法上の考案とはそれぞれ対象物が、一方は視覚で認識できる物品の外観であるのに対して、他方は物品の形状、構造又は組み合わせについての自然法則を利用した技術的思想であるというように、それぞれ性格を異にするものであるから、一方の物品の意匠が他方の物品の意匠に抵触するからといって、その一方の物品の形状、構造などがその他方の物品の形状、構造等についての技術的思想に必ず抵触するというものではない。
そして、原告による本件意匠又はそれに類似する意匠の実施に係るバンドは、別紙四(公開実用新案公報)に記載の「実用新案登録請求の範囲」の各請求項に係る考案のコルセットとの対比において、一方の対象物品が股関節部分を緊締して姿勢を正したり、腰痛等の障害を取り除くための健康保持用具としての股関節部緊締用バンドであるのに対し、他方の対象物件が整形外科で患部の固定、安静を保つための医療用具又は腹部、腰周りの形を整えるための美容用具としてのコルセットであるといったように、対象物品に係る構成要件において既に相違する。
加えて、原告の実施に係るバンドは、別紙四に記載の当該請求項の「二枚の弾性ベルトを連結係止する一又は複数の弾性小布片」に係る構成要件を欠く構成となっていることから、その他の事項については検討するまでもなく原告の実施するバンドは別紙四に記載の当該各請求項の考案の技術的範囲に属するものではなく、よって、それら考案に抵触するおそれはない。
第三 証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。
理由
一 原告の意匠権
原告が本件意匠権を有することは当事者間に争いがない。
二 イ号意匠の特定
原告は、被告が、イ号意匠、すなわち別紙一記載の意匠に係る製品ユーコシラックを製造、販売していると主張するのに対し、被告はユーコシラックを製造、販売していることは認めるものの、別紙一記載の意匠は、ユーコシラックについて本件意匠に類似させて作図したものであり、ユーコシラックの意匠そのものではない、ユーコシラックの意匠は、別紙三(乙一の2-意匠登録願-の図面代用写真)のとおりであると主張している。
そこで検討するに、ユーコシラックであることに争いのない検乙一と別紙一の図面を対比すると、同図面の正面図、平面図、底面図、背面図及び右側面図は、空中でユーコシラックの両端部を左右に軽く引っ張りつつ、ユーコシラックの生地の水玉模様のない面を正面として、正投象図法によりほぼ各図同一縮尺で作図されたものであり、また左側面図も右側面図と対称に表れることが認められ、さらに、X-X線断面図、両端部を係着させた状態の正面図及び両端部を係着させた状態の平面図もそれぞれほぼ正確に作図されているものと認められる(ただし、後記三2(四)の(5)(6)で述べるユーコシラックの生地に施された模様等及び下方バンドにとめられた二本のゴム状布については、別紙一の図面には記載されていない。)。
一方、検乙一と別紙三の図面代用写真を対比すると、まず別紙三の写真のうち正面図の写真は、ユーコシラックの生地の水玉模様が施されている側を正面とし、これを上にして、平面にユーコシラックを平板状に押し拡げて置いたような状態で、これを上部から写真撮影したものであること、同様に背面図の写真はその裏側を上にしてやはり平面に押し拡げて置いたような状態で、これを上部から写真撮影したものであること、平面図、底面図、右側面図及び左側面図の各写真もそれぞれ同様の状態で撮影したものであることが認められる。
したがって、別紙一の図面及び別紙三の図面代用写真は、いずれもユーコシラックを表したものであるが、本件意匠は、その意匠公報(別紙二-甲三)において図面代用写真ではなく別紙一と同様の正投象図法による図により表されており、また別紙三の図面代用写真は、ユーコシラックを平板状に押し拡げて置いたような状態で撮影されたものである点でその立体的な特徴の十分な把握が困難であると考えられるので、以下、本件意匠との対比においては、検乙一とともに、別紙一の図面を被告が製造、販売するユーコシラックの意匠を表す図面として参照しつつ検討を進めることとする。
三 本件意匠とイ号意匠との類似性
1 両意匠に係る物品の同一性
本件意匠に係る物品も、イ号意匠に係る物品も、長手方向に豊かな弾性を有する上方バンドと下方バンドとがそれぞれの左右両端部で一体化され、上方バンド及び下方バンドをそれぞれヒトの上方臀部及び下方臀部に当てつつ、その左右両端部を両手で引っ張りながらヒトの前腹部で相互に係着させることによって、その下方バンドでヒトの股関節のある位置の腰周りを上下に移動することのない安定した状態で緊締できるようにした股関節部緊締用バンドであり(別紙一、二、検甲一~九、乙一五、検乙一)、被告製品(ユーコシラック)は、本件意匠に係る物品と同一物品であると認められる。
2 本件意匠とイ号意匠の構成の対比
(一) 本件意匠の構成
原告は、本件意匠の構成を請求原因4(一)のとおり主張しているところ、原告が本件意匠権の範囲内にある類似意匠についての一実施品であると主張し、原告の製品であることは争いがないナカイペアバンド(現物が検甲九で写真が検甲一、三、五、七)と別紙二の図面を対比するに、上方バンドは、本件意匠では、中間部から左右へそれぞれ下縁線を斜め上方へ上昇させているのに対し、ナカイペァバンドは、逆に上縁線を斜め下方へ下降させており、下方バンドも、本件意匠では、上縁線がその中間部上縁線よりもほぼその中間部の上下巾分近く上方に位置するようになっているが、ナカイペアバンドの上縁線はむしろ下降しているなど、それぞれの形状(両端部の形状を含む)が異なり、また本件意匠は上方バンド、下方バンドとも左右対称形であるのに対し、ナカイペアバンドの下方バンド(ナカイペアバンドの二本のバンドはその両端部において相互に係着又は分離することが可能である)の一方の端部はもう一方の端部よりも長く左右対称形ではないなどの明らかな相違点が存することから、ナカイペアバンドが本件意匠の類似意匠と評価できるか否かはともかく、本件意匠の忠実な実施例であるとみることはできない。そして、意匠出願の図面に記載された意匠と、権利者の実施品の意匠とが必ずしも同一でない場合が往々にしてあり、そのような場合、登録意匠の権利内容はあくまで意匠法二四条のとおり登録意匠の願書の記載及び添付図面等からその権利範囲を定めてそれとの対比をなすべきであるから、本件では別紙二によってその権利範囲を確定するべきである。
そこで、別紙二の正面図、背面図、平面図、底面図、右側面図及びA-A線断面図を総合すると、本件意匠の構成は、次の点を除き請求原因4(一)記載のごとく説明しうるものであると認めることができる。すなわち、別紙二の図面によれば、本件意匠においては、上方バンドと下方バンドはその左右端部において一体化されているのみで中間部においては相互に固着されていることは窺われないことからすれば、請求原因4(一)(3)における「下方バンドの中間部上方部を上下方向に対して約三〇度後方へ傾斜させる一方で上方バンドの中間部下方部を上下方向に対して同様に約三〇度後方へ傾斜させながら上方バンドの中間部下縁部をして下方バンドの中間部上縁部を覆わせる態様にしつつ」との点は、そのような状態、すなわち別紙二の特に右側面図及びA-A線断面図で表されたような状態にも本件意匠に係る製品を人為的にすることができることを意味するにとどまり、その状態が本件意匠の常態であるとはいうことはできない。このことは、ナカイペアバンドが本件意匠の類似意匠といえるか否かはともかく、上方バンド及び下方バンドを左右両端部で一体化して各両端部を引っ張りながら別紙二の右側面図及びA-A線断面図で表されるごとく両バンドが角度をもって接する状態に保つことが困難であることからも明らかである。したがって、請求原因4(一)(3)記載中の前記点を本件意匠の構成として捉えるのは相当ではない。
(二) イ号意匠の構成
次に、被告製品であるユーコシラック(検乙一)及び別紙一の図面によれば、イ号意匠の構成は、請求原因4(二)記載のごとく説明し得るものであることが認められる。なお、イ号意匠については、本件意匠と異なり、請求原因4(二)(4)記載のとおり中間部に上方バンドと下方バンドを固着する二つの四角の布片が存在するため、両端部を左右に引っ張ることにより自ずと別紙一の特に右側面図及びX-X線断面図で表された状態になることが認められる。したがって請求原因4(二)(3)記載中の「下方バンドの中間部上方部を下方へ水平方向近くまで弛ませる形に後方へ傾斜させつつ、その中間部の上縁線が上方バンドの中間部の上下巾分近く下降して上方バンドの中間部の下縁線に接近するようにする一方で、上方バンドの中間部下方部を上下方向に対して約三〇度傾斜させながら上方バンドの中間部下縁部をして下方バンドの中間部上縁部を覆わせる態様」にある点もイ号意匠の基本的構成として捉えるのが相当である。
(三) 本件意匠とイ号意匠の共通点
本件意匠の構成とイ号意匠の構成を対比すると、
(1) 上下巾が全左右長の約八分の一である中間部とその左右両側からそれよりも上下巾が狭い左右両端部へと連続する部分から成る相互にほぼ同一左右長の横長帯状物でそれぞれ構成されている上方バンドと下方バンドとから成り、
(2) 下方バンドの左右両端部の後側に上方バンドを重ねて、双方の左右両端部で相互に一体化された全体形状のバンドである
という点において、両意匠は共通すると認められる。
(四) 一方、両意匠には、次の相違点が存在することが認められる。
(1) 本件意匠の上方バンドが扁平船形の横長帯状物で(別紙二の背面図)、かつ、下方バンドが左右両端部の斜め上方へ緩く彎曲する扁平船形の横長帯状物である(同正面図)のに対し、イ号意匠の上方バンドと下方バンドとは共におおむね扁平楕円形の横長帯状物からなっている(別紙一の正面図、背面図、検乙一)。
(2) 本件意匠のバンドの左右両端部はその上下巾がバンド中間部の上下巾の約半分であり、かつ、各先端がほぼ縦二、横一の割合の長方形に成形されているのに対し、イ号意匠のバンドの左右両端部はその上下巾がバンド中間部の上下巾の約三分の二であり、かつ、各先端が円弧状に成形されている。
(3) 前記2(一)に述べたとおり、本件意匠においては、上方バンド及び下方バンドはその各両端部において一体されているのみであることから、上方バンドと下方バンドが角度をもって接する状態にすることができるとしても、それが本件意匠の常態であるとは認め難いのに対して、前記2(二)で述べたとおり、イ号意匠においては、左右両端部を引っ張ると、下方バンドはその中間部の上方部が下方へ水平方向近くまで弛んだ形に後方へ傾斜し、かつ中間部における上方バンドと下方バンドとの角度がほぼ九〇度となる状態に自然になることが認められる。
(4) イ号意匠では、上方バンドの正面の真中部に楕円形の発泡プラスチックを入れた縦長楕円形の網目状の布ポケットが存するが、本件意匠にはこの付設物はない。また、イ号意匠においては、下方バンド中央下部に約四センチメートルのタックが一つ入っているため、同付近は軽いふくらみをもった形状となっている。これに対して本件意匠は、こうしたタックは一切ない。
(5) イ号意匠においては、バンドの左側端部の正面及び右側端部の背面にはバンド両端部の相互係着用ホックの雄金具二個と雌金具六個がそれぞれ付設され、下方バンド中間部付近に長さ約一八センチメートルの細長いゴム状布が二本それぞれスナップホックでとめられ、また上方バンドの両端の下縁部にこのゴム状布の先端についたスナップホック金具を止めるための同金具が二個付設されているが、本件意匠ではそれらの付設物がない。
(6) 本件意匠は、無彩色であるが、イ号意匠はやわらかい美感をもった肌色であり、バンド表面地全体に直径約四ミリメートルのドット(水玉模様)が約一センチメートル間隔で均等に配され、かつ、約一八センチメートル間隔で「YOU KOSHI LUCK」という文字が記されている。
3 類否の判断
(一) 原告の主張する本件意匠の要部について
原告は、前記2(三)で述べた両意匠の共通点の他、下方バンドの中間部上方部を後方へ傾斜させるとともに、その下方バンドの中間部上縁線を上方バンドの中間部下縁線に接近させるようにしつつ、さらに上方バンドの中間部下方部を後方へ傾斜させながらその上方バンドの中間部下縁部をして下方バンドの中間部上縁部を覆わせる態様にされている点(以下「上方バンドと下方バンドが角度をもって接する点」という)においても共通し、これらの共通点に係る態様は、ヒトの股関節部周りを緊締するバンドとしての基本的構成態様であって、この種バンドの意匠として全体的なまとまりを形成するとともに、従来のヒトの腰部とか胴部の周りを緊締するバンド類においては見受けることのなかった斬新、新規な態様であり、したがってこの基本的構成態様は顕著に看者の注意を惹く意匠の部分になっていて、ヒトの股関節部を緊締するバンドに係る本件意匠の要部というべき部分であると主張する。
しかしながら、上方バンドと下方バンドが角度をもって接する点については、イ号意匠の場合とは異なり、本件意匠の基本的な構成であるとすることが相当でないことは既に述べたところである。
また、仮にこの種のバンドが原告主張のとおりヒトの腰部とか胴部の周りを緊締するバンドとしては新規な商品であるとしても、物品の構成とそれに.基づく作用効果が問題とされる特許権又は実用新案権の場合と異なり、意匠権の場合には、その意匠に係る物品についての当該意匠全体から受ける美感が問題とされるもので、新種の商品であるからといって、ただちにその物品の基本的構成部分に意匠としての要部があるとすることはできない(東京高判昭五八年五月一六日、無体集一五巻二号三七三頁参照)。
そして、上方バンド及び下方バンドをそれぞれヒトの上方臀部及び下方臀部に当てつつ、その左右両端部を両手で引っ張りながらヒトの前腹部で相互に係着させることによって、その下方バンドでヒトの股関節のある位置の腰周りを上下に移動することのない安定した状態で緊締できるようにした股関節部緊締用バンドとしては、本件意匠のようなほぼ同一左右長の横長帯状の二本のバンドが左右両端部で相互に一体化されたバンドという基本的形態を取るものと考えられるから、そのような形状は機能を全うするための必然的形態というべきである。このことは本件意匠より先願の実用新案権(ユーコシラックがその実施品であるかどうかはともかく)の公報(別紙四)にその実施例として、二本の横長帯状物から成る右基本的形態のコルセットが記載されていること(同証拠の図4)からも窺われる。したがって、前記の股関節緊締用バンドの基本的形態をもってただちに本件意匠の要部とみることはできない。なお、付言すると、乙一五によれば、ユーコシラックについては本件意匠より後願ではあるが、乙一の2の出願に基づき意匠登録されている事実が認められ、特許庁も、少なくとも横長帯状の二本のバンドが左右両端部で一体化されているという股関節緊締用バンドの基本形態の一致のみでは、意匠が類似していないと判断していることが窺われる。
(二) 色彩、付設物の有無等の相違について
本件意匠とイ号意匠との間には、前記2(四)のとおり相違点が存在するところ、まず、色彩及び模様の有無について検討するに、本件意匠公報(甲三)には、当該意匠の色彩及び透明、不透明に関する何らの記載もされていないから、当該意匠は色彩の限定のないものと解すべきである。また、ユーコシラックは薄い肌色地にやや濃い肌色の水玉模様が存在するが、その模様もありふれたものである上、「YOU KOSHI LUCK」の文字も通常の文字の域を出て模様に変化していると認められるような特徴を備えたものではない。したがって、このようなイ号意匠の色彩や模様等が特段に看者の注意を惹く点とは考えられない。
また、イ号意匠においては、バンドの左側端部の正面及び右側端部の背面にバンド両端部の相互係着用ホックの雄金具二個と雌金具六個がそれぞれ付設されており、本件意匠にはこれが存しないが、本件意匠は一体化されたバンドの両端部を相互に係着して使用するものであることから、その係着にホックを使用することは通常想定されるところである。また、下方バンドに付設されている細長いゴム状の布二本についても、同布は下方バンドがずり上がる場合に取り付けて使用する付属品であることが認められる(乙五)。これらを総合すると、右付設物等をもって、イ号意匠の看者の注意を惹く点とみることはできず、本件意匠との類否判断において要素として取り上げるに足りない。
なお、被告は、本件意匠は、二本の独立したバンドで構成されると主張するところ、確かにナカイペアバンド(検甲九)は両端部で相互にホックで係着できる二本の独立したバンドであるが、ナカイペアバンドが本件意匠の忠実な実施例でないことは既に述べたところである。そして、本件意匠公報には、「両端部は自在に、相互に係着させたりその係着を外したりすることができる。」との記載があるが、この記載は、一体化された左右両端部を相互に係着させ、また取り外すことができることの説明であると解され、その他本件意匠公報において、上方バンドと下方バンドが分離可能な二本の独立したバンドであることを窺わせる記載及び図も存在しないから、分離可能な二本のバンドであるという点を本件意匠の構成とすることはできない。
(三) 看者の注意を惹く相違点について
しかしながら、前記2(四)(1)ないし(4)の各点における本件意匠とイ号意匠の相違点は、全体として看者の美感に異なった印象を与えるものというべきである。
すなわち、前記2(四)(1)のとおり横長帯状物である上方バンド及び下方バンドの形状は、本件意匠においては偏平船形であるのに対し、イ号意匠は偏平楕円形であることに加え、別紙一及び二の正面図及び背面図の対比から明らかなように、中間部における上方バンドと下方バンドを合わせた上下巾は本件意匠の方がイ号意匠よりかなり大きいことから、イ号意匠は本件意匠に比べてよりスマートな印象を受ける。また、同(2)のとおり、本件意匠の両端部は長方形であり、その上下巾は中間部の半分程度であるのに対し、イ号意匠の両端部は円弧状に成形され、その上下巾も中間部の三分の二程度であることから、イ号意匠の方がその両端部はなめらかな印象を受ける。さらに、本件意匠は、中間部において上方バンドと下方バンドが相互に固着されていないことから両バンドが角度をもって接するというよりは平面的に重なるような状態になりやすい(別紙一及び検甲九から推認される)のに対し、イ号意匠は、中間部で両バンドが相互に布片で固着されていることにより、左右両端部を引っ張れば自ずと別紙一の右側面図及びX-X線断面図に表されるように両バンドが角度をもって接する状態になることから、本件意匠に比べて立体的な印象を受け、また、発泡プラスチック入りのポケットやタックがバンド生地に緩やかな起伏を作っていることもこの印象を助長している。そして、これらの相異から、本件意匠は二本のバンドから構成されているという印象が強いが、イ号意匠はより一体化されたバンドであるという印象を受け、またイ号意匠からは、本件意匠に比較してより立体的で、柔らかな印象を受ける。
以上を総合すると、本件意匠とイ号意匠とは、その一致点を超絶して、なお看者の受ける美感を異にするものがあり、全体的に観察して類似しないと解するのが相当である。
甲四(弁理士多田貞夫作成の鑑定書)は、請求原因4(三)のとおり本件意匠の基本的構成態様としての要部が共通するとし、バンドの形状及び両端部の形状などの相異点はいずれも微差にすぎず、本件意匠とイ号意匠は類似するとするが、その前提とする本件意匠の構成及び要部の捉え方が相当でないことは3(一)で述べたとおりであるから、その結論は採用できない。
四 以上の次第であるから、イ号意匠が本件意匠権を侵害することを前提とする原告の請求は、その余の点を判断するまでもなくいずれも理由がない。
よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井垣敏生 裁判官 松本利幸 裁判官 本田敦子)
別紙一
<省略>
(19)日本国許庁 (11)登録意匠番号
(45)平成6年(1994)6月8日発行 (12)意匠公報(S) 900798
(52)B2-011A
(21)意願 平3-248101 (22)出願 平3(1991)8月20日
(24)登録 平6(1994)3月25日
(72)創作者 中井均 京都府京都市下京区万寿寺通東洞院東入万寿寺中之町72
(73)意匠権者 中井均 京都府京都市下京区万寿寺通東洞院東入万寿寺中之町72
(74)代理人 弁理士 多田貞夫
審査官 早川治子
(54)意匠に係る物品 股関節部緊締用バンド
(55)説明 本物品は、ヒトの股関節部組織の異常を匡正してヒトの基本姿勢を正すと共に腰痛、神経痛などの各種障害を取除くのに著効を奏することが少なくない、ヒトの股関節部のある位置の腰部周りの緊締操作が安定して継続できるようにされた、共に長手方向に豊かな弾性を有する下方部バンドと上方部バンドとが夫々の左右両端部で一体化されてなるバンドであり、そのバンドの下方部バンド及び上方部バンドの各中央部を夫々ヒトの下方臀部及び上方臀部に当てつつ、その一体化された左右両端部を両手で引張りつつヒトの下方前腹部で相互に係着させることによつて、その下方部バンドで所期のヒトの股関節のある位置の腰部周りを上下に移動することのない安定した状態で緊締することができるものである.両端部は自在に、相互に係着させたりその係著を外したりすることができる.左側面図は右側面図と対称にあらわれる.
<省略>
別紙二
<省略>
別紙三
<省略>
意匠登録出願人の氏名(名称) 株式会社ユー 出願番号
意匠に系る物品 股関節部緊締用バンド 出願日 平成 年 月 日
<省略>
<省略>
別紙四
(19)日本国特許庁(JP) (12)実用新案公報(Y2) (11) 実用新案出願公告番号
実公平7-54245
(24)(44)公告日 平成7年(1995)12月18日
(51)Int.Cl. A41C 1/00 1/10 A61F 5/02 識別記号 A A 7108-4C 庁内整理番号 F1 技術表示箇所
請求項の数7
(21)出願番号 実願平3-65089
(22)出願日 平成3年(1991)7月22日
(65)公開番号 実開平5-10407
(43)公開日 平成5年(1993)2月9日
(71)出願人 591143733
有限会社堀江企
奈良県桜井市大宇栗殿1008番地の6
(72)考案者 堀江久男
奈良県桜井市大字累殿1008番地の6
(74)代理人 弁理士 西沢茂稔
審査官 鈴木美知子
(56)参考文献 特開 平1-148801(JP、A)
実開 昭51-5(JP、U)
実開 昭53-95208(JP、U)
実公 昭9-6774(JP、Y1)
(54)【考案の名称】 コルセット
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 長手側緑をほぼ接して並列に並ぺ、両端部を重ねて接着または縫い付けて固定してなる二枚の弾性ペルトと、
前記二枚の弾性ペルトの相対向する長手側縁部を連結係止する一または複数の弾性小布片と、
前記二枚の弾性ペルトの重ねて固定した両端部に設けた、互いに係止できる係止部材と、
よりなるコルセット.
【請求項2】 長手側緑をほぼ接して並列並ぺ、両端部を重ねて接着または縫い付けて固定してなる二枚の弾性ペルトと、
前記二枚の弾性ペルトの相対向する長手側縁を連結係止する一または複数の弾性小布片と、
前記二枚の弾性ペルトの重ねて固定した両端部に設けた、互いに係止できる係止部材と、
前記二枚の弾性ペルトのうち一方の弾性ペルトの長手側縁部のほぼ中央に、間隔をおいて着脱自在に係止した、先端に係止手段を設けた二本のテープ状小布片と、
前記二枚の弾性ペルトのうち一方の弾性ペルトの両端寄りに設けた、前記二本のテープ状小布片の先端の係止手段と係合できる係止手段と、
よりなるコルセット.
【請求項3】 中央長手方向に、両端部を残して中央に線状の切り目を設けた弾性ペルトと、
前記弾性ペルトの線状切り目の両縁を連結する弾性小布片と、
前記弾性ペルトの両端に設けた、互いに係止できる係止手段と、
前記弾性ペルトの長手側縁部に着脱自在に係止した二本のテープ状小布片と、
前記二本のテープ状小布片の先端と前記弾性ペルトとを係止するための係止手段と、
よりなるコルセット.
【請求項4】 2条のテープ状小布片を固定していない方の弾性ペルトに小袋を設け、該小袋の中に弾性体を収納してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコルセット.
【請求項5】 弾性ペルトが、長手方向に弾性の経糸が用いられ、かつ、弾性強度の異なる複数の幅よりなり、それらの幅の部分が弾性ペルトの側部より中央部の方が弾性強度が強いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコルセット.
【請求項6】 2枚または二部分の弾性ペルトを係止する弾性の小布片は、対向する縁部が弾性ペルトに固定され、中間部は固定されていないことを特徽とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコルセット.
【請求項7】 弾性ペルトの両端を互いに係止する係止手段が雌雄の面接着部材よりなり、その雄面接着部材を設けた面と同一の面で、かつ、その雄面接着部材に接近して更に雌面接着部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコルセット.
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この考察はコルセットに関するものである.
【0002】
【従来の技術】従来、美容用および医療用のコルセットとしてパンティ形式のものがある.これらのコルセットは、同一の弾力の径糸よりなる非常に強力な弾性布地で作られている.
【0003】
【考案が解決しようとする課題】従来のパンティ形式のコルセットは、同一の弾力の径糸よりなる非常に強力な弾性布地で作られているため、コルセットによる腰、胴、ヒップ等を強力に締め付けるので,コルセットで押さえられた人体部分と押さえられていない人体部分とに急激な圧力差が生じて、その境界部分にむくみが生じ、また、血液の循環を阻害する.また、コルセットの前部と後部との下方での連続部分の緑が、人体の大腿の付け根を摩擦して、しばしば炎症を起こさせている.従来のコルセットは布地が弾性強度が同一で強い弾力であるので使用時腰のねじり運動に強い力を必要とし、また、使用時人体の動きにより、腰部と胴部との境界部分に波状のシワが生じ、それが被服にも影響して外見上も見苦しい.また、婦人はコルセットを着用した上にパンティおよびパンティストッキングを重ねて着用するので、日に何度もトイレを使用する際に、その都度コルセットを外さなければならず、大変面倒である.
【0004】この考案は、コルセットを使用しても、人体に急激な圧力差を生じさせることなく、従って血液の循環の阻害や炎症を起こさせることなく、使用時人体を動かし易く、また、外見を損ねることなく、トイレ使用時にその都度外すことの必要のないコルセットを提供することを目的とする.
【0005】
【課題を解決するための手段】弾性ペルト二枚を長手側緑をほぼ接して並列に並ぺ、それら弾性ペルトを1または複数の弾性小布片で連結係止し、前記2枚の弾性ペルトのそれぞれの端部を重ねて接着または縫い付けて固定し、その両端のそれぞれの重ね固定部分に、互いに係止できる係止手段を設け、前記弾性ペルトのうち1方の弾性ペルトの側縁部に2本のテープ状小布片を固定または着脱自在に取り付け、それら2本のテープの先端に係止手段を設け、かつ、その弾性ペルトの両端寄りに、前記テープ状小布片の係止手段に係合できる係止手設を設ける.
【0006】1枚の弾性ペルトの中央長手方向に、両端部を残して中央に、綿状の切り目を設け、その切り目で一部分離された弾性ペルトの2部分を弾性の小布片で係止し、弾性ペルトの両端に互いに係止できる係止手段を設け、弾性ペルトの長手側縁部に2本のテープ状小布片の一端を固着または着脱自在に取り付け、そのテープ状小布片の他端に係止手段を設け、該長手側縁部の両端寄りに上記2本のテープ状小布片の他端を着脱自在に係止するための係止手段を設ける.
【0007】2条のテープ状小布片を固定または着脱しない方の弾性ペルトに小袋を設け、該小袋の中に弾性体を収納する.
【0008】弾性ペルトは、長手方向に弾性の経系を用いかつ、弾性強度の異なる複数の幅より構成し、それらの幅の部分が弾性ペルトの側部より中央部の方が弾性強度を強くする.
【0009】2条の弾性ペルトを係止する弾性の小布片は、対向する端部が弾性ペルトに固定され、中間部は固定しない.
【0010】弾性ペルトの両端を互いに係止する係止手段が雌雄のマジックテープ(商標)(以下面接着部材という)よりなる場合に、その雄面接着部材を設けた面と同一の面で、かつ、その雄面接着部材に接近して更に雌面接着部材を設ける.
【0011】
【実施例】下図面に示す実例について説明する.図1に示すものは、弾性ペルト1、2および3を並列に、かつ、ほぼ接して並ぺ、弾性ペルト1と2とを2枚の小布片4、4で、弾性ペルト2と3とを2枚の小布片5、5で連結し、弾性ペルト3の中央部下縁部に2条のテープ状の小布片6を取り付け、弾性ペルト1乃至3のそれぞれの一方の端部には雄の面接着部材7を取り付け、それぞれの他方の端部には、雄の面接着部材7のある表面の裏面側に雌の面接着部材8を取り付ける.これら面接着部材7および8は、弾性ペルト1乃至3を腰やヒップに巻き付けて面接着部材7と8とを係合させて弾性ペルト1乃至3を腰等に固定するためのものである.
【0012】テープ状小布片6は弾性ペルト3に固着または着脱自在に係止してもよい.弾性ペルト3の下縁部に取付けたテープ状小布片6の先端部には雄ホックポタン9を取り付け、弾性ペルト3の着用時の表側で、かつ両端寄りに雌ホックポタン10を取り付ける.雌ホックポタン10は弾性ペルト3の表裏いずれに取り付けてもよい.テープ状小布片6は弾性布地で形成するのが好ましい.これらテープ状小布片6は、弾性ペルト3を着用したときに、設下をくぐらせて、ホックポタン9と10とで係止し、弾性ペルト3のヒップへの固定を確実にし、使用時弾性ペルトがずり上がるのを防止する.雌ホックポタン10は、前記両端寄りにそれぞれ複数個設ければ体格に応じて調整することができる.
【0013】面接着部材7および8の代わりにホックポタン等公知の係止手段を設けてもよい.弾性ペルトにホックポタン等金属製係止手段を設ける場合には、弾性ペルトのそれら手段を取り付けた部分およびその付近にラパー樹脂を塗布すれば補強上好ましい.
【0014】弾性ペルト2と3とを連結している小布片5は弾性布地よりなり、図2に示すように、上下の縁部11で弾性ペルト2と3とに固定しており,中間部12は固定しない.小布片5の横幅は、限定するものではないが、4cm位が好ましく小布片5と5との間隔は、これも限定するものではないが、7~12cm位が好ましい.小布片5、5の位置は、弾性ペルト2と3の中央部でもよく、または、後述する使用時に弾性ペルト2と3の面接着部材7と8との重ね部分が脇腹部分に位置させるために、弾性ペルト2と3との中央よりいずれかの端部方向へ偏ってもよい.
【0015】小布片4および5は2枚に限定するものではなく、1または複数用いることができる.
【0016】弾性ペルト3の形状は、図において上下幅が一様のものでもよいが、図1に示すように上緑両端部を下方に傾斜きせた方が、着用時にヒップにフィットして好ましい.
【0017】コルセットの使用時弾性ペルト2の人体に接する面で仙骨を押さえる部分に小袋13を設けるのが好ましい.小袋13は使用時の上緑に開口を設け、ゴム等の板状弾性体を挿入可能とする.この弾性体はコルセット使用に仙骨を押さえることにより背筋を伸ばし脊髄の矯正に役立つ.
【0018】弾性ペルト1は省略してもよく、そのために、小布片4は、上縁部を弾性ペルト1に固定し、下縁部には係止手段を設け、それに対応する弾性ペルト2の上縁部にも係止手段を設け、弾性ペルト1と2とを着脱自在に連結するりが好ましい.また、小布片4の両端と弾性ペルト1と2とに着脱可能な係止手段を設けてもよい.もちろん、コルセットの弾性ペルトを2と3だけで形成してもよく、その場合には弾性ペルト2には上記の弾性ペルト1との係止手段を設けなくてもよい.
【0019】弾性ペルト1乃至3のそれぞれの弾性布地は、図3に示すように、弾性ペルトの幅(図において縦幅)を上縁および下縁から中央方向に向かって弾力が順次強い複数の小幅で形成し、弾力はa部分<b部分<c部分を形成する.a、b、c部分の弾力差は、それぞれの部分の径糸に弾力の異なるゴム糸、弾性繊維糸等を用いるか、いまたは等しい弾力のゴム糸等の複数本を径糸とすることにより求めることができる.この場合1本の経糸の太さが異なるので、そのまま織ると右片の厚さが均一でなくなる.従って、1本のゴム糸等に巻く糸の層の厚み、および複数のゴム系等を1本にまとめてそれに巻く糸の層の厚みを調整して、上記それぞれの弾力差のある経糸の太さを等しくなるようにすれば、織り上がった布地の厚さが均一になる.小幅による構成はa、b、c、d、aに設定するもの、a、b、の構成でもよく、またそれぞれの小幅の幅は等しくてもよく、または異なってもよい.
【0020】上記のように糸で径糸の太さを均一にすることをしないで、各弾性ペルトの縦幅(図1において)の上下縁部の径糸を中間部分の径糸よりも細くすれば、皮膚とコルセットの段差を小さくするので、着用時その段差が外見に現れるのを防ぐことができる.
【0021】この考案にかかるコルセットを使用する場合には、弾性ペルト1を胴部に当てて面接着部材7と8とを重ねて係合し、弾性ペルト2をヒップ上方すなわち胴のくびれ部に当てて面接着部材7と8とを重ねて係合し、弾性ペルト3をヒップに当てて面部着材7と8とを重ねて係合し、小布片6、6を股下をくぐらせてホックポタン9と10とを係合させる.弾性ペルト1を省略してもよいことは前述したとおりである.
【0022】前記使用方法は弾性ペルト1、2および3を並列に着用する方法であるが,弾性ペルト2および3をクロスして着用することも可能である.すなわち、図1において、弾性ペルト2の左端の面接着部材7と弾性ペルト3の右端面接着部材8を係合させ、弾性ペルト2の右端の面接着部材8と弾性ペルト3の左端の面接着部材7とを係合させる.この場合上記2ヶ所の係合部分が両腹部または脇腹付近のいずれに位置するように設計してもよい.弾性ペルト2と3とのクロス部分は、弾性ペルト2と3の中央部を脊髄部分およびヒップ後方に当てて腹部でクロスさせるか、または、弾性ペルト2と3とを腹部および腹部上方に当てた後背後でクロスさせる.背後でクロスする場合には、小袋13の位置を変更する必要がある.
【0023】図4に示すコルセットは、並列に並べた2枚の弾性ペルト2aと3aとを小布片5で連結係止し、それら弾性ペルト2aと3aとのそれぞれの両端を互いに重ねて接着または縫い付け、それら接着または縫い付けた端部の一方の表と他方の裏とに、面接着部材14、15を設け、それら面接着部材14、15のいずれかを雄、他方を雌として、それらを係合可能としたものである.弾性ペルト3aには2条のテープ状小布片6を固定または着脱自在に係止し、かつ、そのテープ状小布片6の端部を係止するためのホック10を取り付ける.
【0024】図5に示すコルセット1は、一枚の弾性ペルトでコルセットを形成したものである.すなわち、弾性ペルト16に、その長手方向に中央に直線状に切り目17を設け、切り目17で分断された二つの部分16aと16bとを小布片5で係止する.弾性ペルト16の両端部分16cには切り目を設けないで、幅を細くし、一方に雄面接着部材18、他方に雌面接着部材19を設ける.弾性ペルト16の部分16aには、2条のテープ状小布片6を固定または着脱自在に係止し、それらテープ状小布片6の端部を係止するためのホック10を取り付ける.弾性ペルト16は、長手方向の両側縁よりも切り目17付近の方が弾力の強い径糸で織られたものにするか、または、長手方向の両側緑と切り目17の縁部を弾力が、部分16および部分16b中央方を弾力が強い径糸で織られたものにする.
【0025】図4および図5のコルセットを使用する場合には、図1の実施例の場合とほとんど同じで、弾性ペルトを腰およびヒップに巻き付けて、面接着部材14と15、18と19とを腹部等で重ね合わせて係止し、小布片6を股下をくぐらせてその先端をホック10等係止手段に係止させる.小布片5は、コルセットの着用時に上下の弾性ペルト2aと3a、または弾性ペルト16の上下部分16aと16bとが極端にはなれるのを防止しこかつ、それらが横にずれるのを可能にする.
【0026】図1に示すように、それぞれの弾性ペルトの雄面接着部材7の近くに雌面接着部材8aを設け、それら面接着材7と8aとを重ねて係止しておけば、弾性ペルト1~3の面接着部材7のいずれかが、弾性ペルト1~3のいずれかの他端の面接着部材8に係止して折り畳みした形がくずれるのを防止でき、また、他の収納物例えばストッキング等に付着して取り外す際にストッキング等が傷むのを防止することができる.
【0027】
【作用】弾性ペルト2枚または3枚が並列に並べられ、または、切り目で二部分に形成されて、コルセットが分割されているので、これら弾性ペルトを並列にしで使用する場合には、それらの弾性ペルトは人体の胴からヒップにかけてのカープに応じて個別に締め付ける.弾性体2と3とはクロスして胴およびヒップに装着することも可能とする.小布片4および5は各弾性ペルトまたは弾性ペルトの二部分を繋止し、弾性があるので、コルセットの着用時に人体の動きに応じて各弾性ペルトまたは部分間にズレを生じさせる.小布片5は弾性があり、上縁部が弾性ペルト2、2a、16aに、下縁部が弾性ペルト3、3a、16bに固定され、中間部はフリーであるので、二枚の弾性ペルト、または二部分の弾性ペルトが互いに反対に横方向にずれるのをスムーズにする.小布片6は、使用時股下をくぐって弾性ペルト3等の前後に係止されるので、弾性ペルト3等がずり上がるのを防止する.小袋13は弾性体の収納を可能にし、コルセットの使用時その弾性体は仙骨を押さえる.弾性ペルトは縦幅の両端部から中央に向かって順次弾力が高くなるので、コルセットの着用時に順次圧力を高める.弾性ペルトの雄面接着部材を設けた面と同一の面に、かつ、雄面接着部材に接近して設けた雌面接着部材は、前記雄雌面接着部材の係合を可能とする.
【0028】
【効果】この考案に係るコルセットは、2本または3本の弾性ペルトを弾性の小布片で係止しているので、人体の動作に応じて弾性ペルトにずれが生じ、人体の動作に適応し易く、波状のしわが生じないので、着用した服装にくずれが生じない.弾性ペルトは縁部から中央部に向かって弾力が強くなるように弾性径糸を使用しているので、コルセット着用時、人体におけるコルセットに当接部分と当接していない部分の境界に強力な圧力差が生じないので血液の循環の阻害しないのでむくみを生じることなく、また、設ずれ等の炎症を起こさせない.着用時従来のコルセットのような設下を連結した布地部分がなく、2条の小布片で係止しているので、トイレ使用時にその都度コルセットを脱ぐ必要がない.小袋の弾性体は仙骨を押さえて仙骨を正しい位置にし、背骨を伸ばし、神経への圧迫を正す.なお、弾性ペルトの雄面接着部材に接近して雌面接着部材をもうければ、コルセットの不使用時に該雄雌面接着部材を係合させて置けば、雄の面接着部材が他の物品、たとえばストッキング等、に付着してその他の物品を損ねることがない.
【図面の簡単な説明】
【図1】コルセットの背面図である.
【図2】コルセットの要部背面図である.
【図3】弾性ペルト地の説明図である.
【図4】コルセットの斜視酢である.
【図5】コルセットの背面図である.
【符号の説明】
1 弾性ペルト
2 弾性ペルト
3 弾性ペルト
4 小布片
5 小布片
6 小布片
7 面接着部材
8 面接着部材
9 ホックポタン
10 ホックポタン
11 縁部
12 中間部
13 小袋
14 面接着部材
15 面接か着部材
16 弾性ペルト
17 切り目
18 面接着部材
19 面接着部材
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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意匠公報
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実用新案公報
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